是枝裕和監督の映画作法 - 繊細な人間ドラマの創り方

是枝裕和監督の映画作法 - 繊細な人間ドラマの創り方

ドキュメンタリー的手法がもたらすリアリティ

ドキュメンタリー的手法がもたらすリアリティ

是枝監督の映画作りの根幹には、テレビドキュメンタリーディレクターとしての経験が反映されています。シナリオは大枠を決めるものの、細かいセリフや行動は現場での即興や俳優との対話から生まれることが多いのが特徴です。特に子役や非職業俳優との撮影では、カメラを回し続け、自然な反応や表情を捉える手法を重視。ハンディカメラを多用した自然光撮影や、綿密なリハーサルを行わないスタイルも、その場の空気感や俳優の生の感情を捉えるための工夫です。

「食事のシーン」に見る人間関係の描写

「食事のシーン」に見る人間関係の描写

是枝監督作品の特徴として「食事のシーン」が挙げられます。『歩いても 歩いても』や『海街diary』など多くの作品で、食卓を囲むシーンが重要な役割を果たしています。食事を共にすることで生まれる会話や沈黙、仕草や視線のやり取りを通じて、言葉では表現できない複雑な人間関係を繊細に描き出し、観客に親密さを感じさせるのです。

俳優との信頼関係から生まれる演技

俳優との信頼関係から生まれる演技

是枝監督の作品における演技は、俳優との深い信頼関係に支えられています。完成したシナリオを渡さず、その日撮影する分だけを伝えるスタイルや、俳優の意見を積極的に取り入れる協働的なプロセスを大切にしています。『そして父になる』での福山雅治や『万引き家族』での安藤サクラの演技は、こうした信頼関係の上に成り立っているのです。

普遍的テーマと現代社会への眼差し

普遍的テーマと現代社会への眼差し

是枝監督の作品が国境を越えて共感を呼ぶのは、「家族」「記憶」「喪失」といった普遍的テーマを扱いながら、現代社会の問題に鋭く切り込む視点を持っているからです。しかし、決して社会批判に終始せず、困難な状況の中でも人間の尊厳や愛情の可能性を見出す温かな眼差しが常に存在。メロドラマに陥らず、冷たい視線でもない、その絶妙なバランス感覚こそが、是枝監督の作品の特別な魅力なのです。

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