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小津安二郎:『秋刀魚の味』
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作品の誕生と背景
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1962年に公開された『秋刀魚の味』は、小津安二郎の最後の作品となりました。高度経済成長期の只中にあった日本社会を舞台に、変わりゆく家族の形と、人生の味わいを繊細に描き出しています。タイトルの「秋刀魚の味」は、人生の哀愁や季節の移ろいを象徴的に表現したものとして、作品の本質を端的に表しています。
物語構造と登場人物
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主人公の平山周平(笠智衆)は、娘の道子(岩下志麻)の結婚問題に直面している父親です。妻を亡くし、一人娘と二人暮らしの周平は、道子の結婚を望みながらも、別れを惜しむ複雑な心境にあります。また、昔の同僚との酒席での交流を通じて、人生の味わいや寂しさが浮き彫りにされていきます。登場人物たちの何気ない日常の中に、人生の機微が丁寧に描かれています。
作品のテーマと社会性
![作品のテーマと社会性](https://cdn.shopify.com/s/files/1/0656/4262/7230/files/11_f502a15a-1716-42aa-9705-2010a9aff1ff.png?v=1734577820)
本作は、高度経済成長期の日本社会における家族の変容を背景に、人生の味わいや寂しさを描いています。特に、伝統的な家族観と近代化する社会との軋轢、親子関係の機微、そして老いていくことへの静かな諦観など、普遍的なテーマが織り込まれています。また、会社員の日常生活や飲み会の様子など、当時の社会状況も克明に描写されています。
小津映画の集大成として
![小津映画の集大成として](https://cdn.shopify.com/s/files/1/0656/4262/7230/files/12_45988821-e47c-4b77-9f46-a4b4b51dd412.png?v=1734577820)
『秋刀魚の味』は、小津安二郎の最後の作品として、彼の映画作家としての集大成と位置づけられています。低い位置からのカメラアングル、切り返しのない会話シーン、季節感を表現する「間」のショットなど、小津独特の映画文法が完成された形で表現されています。また、日常の些細な出来事の中に人生の真実を見出す小津の視点が、最も円熟した形で示されている作品としても評価されています。