ジョン・ランディス監督のキャリアと80年代エンタメ革命

ジョン・ランディス監督のキャリアと80年代エンタメ革命

映画界への飛び込みと下積み時代の経験

ジョン・ランディス(1950年生まれ)は、イリノイ州シカゴに生まれ、幼少期に映画への情熱を育みました。10代後半で映画界に入り、20世紀フォックスのメッセンジャーや現場雑務を経験します。1969年にはユーゴスラビアで撮影された『戦略大作戦』の製作現場で経験を積み、現場の空気を肌で学びました。長編監督デビューは低予算の怪作『Schlock』(1973)で、続いてZAZと組んだスケッチ・パロディ映画『ケンタッキー・フライド・ムービー』(1977)でカルト的注目を集めます。下積み時代の多様な現場経験が、後の作品における実写の肉体性と音響の快感を両立させる演出の基盤となりました。

『アニマル・ハウス』が切り開いた新たなコメディの地平

1978年の『アニマル・ハウス』は、学生フラタニティの反権威的悪ふざけを描いた青春コメディとして大ヒットを記録しました。低予算ながら社会風刺と下世話な笑いを掛け合わせ、アメリカン・コメディの地平を広げる金字塔となります。この作品はユニバーサルとの結びつきを強め、以後の学園不良コメディの原型を確立しました。1970年代から80年代にかけてのアメリカは、反権威・若者文化のうねりとMTV時代の幕開けが交錯した時期であり、ランディスのコメディは制度や権威の過剰を嘲笑しつつ、音楽と映像の熱量で観客の身体を巻き込む点で時代精神と共鳴していました。

音楽とアクションの融合を実現した『ブルース・ブラザーズ』

1980年の『ブルース・ブラザーズ』は、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドによる伝説的ミュージカル・コメディです。アレサ・フランクリンやレイ・チャールズらの生パフォーマンス、破格のカーチェイス、デボラ・ナドゥールマン(後に妻)による黒スーツとサングラスのアイコニックな衣装が融合しました。音楽映画とアクション映画の交差点を実現し、音楽とアクションを融合した演出で監督としての音と映像のグルーヴ感を確立します。ランディスの核は、ジャンル横断の合奏感にあり、コメディとアクション、音楽とカーチェイスなど異質な要素をテンポの良い編集で束ね、観客をリズムに乗せる手法が特徴です。

『Thriller』がもたらしたミュージックビデオ革命

1983年にはコメディ『大逆転』と、ミュージックビデオの概念を刷新した『マイケル・ジャクソン/Thriller』で頂点を極めました。14分のショート・ホラー仕立てのMVは、映画的語り、メイク、群舞、編集テンポを持ち込み、MVを一段高い短編映画へ押し上げます。この作品はMVを短編映画へと進化させ、映画的文法をポップミュージックに輸入した決定的事例として記憶されています。後の『Black or White』(1991)でもマイケル・ジャクソンと再タッグを組み、音楽映像の表現拡張に寄与しました。ランディスは音楽をドラマの拍動として使い、セリフの間やカットの持続時間まで音楽的に設計するのが特徴です。

ブログに戻る
<!--関連記事の挿入カスタマイズ-->

お問い合わせフォーム