
ロバート・ゼメキス監督のキャリア軌跡と代表作品
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シカゴ生まれの少年が辿った映画への道のり
ロバート・ゼメキス(1952年~)は、シカゴの労働者家庭に生まれた少年時代からテレビに夢中になり、8mmフィルムで自作の短編映画を撮影していました。芸術とは無縁な家庭環境で育った彼にとって、テレビこそが創造の原点となりました。南カリフォルニア大学(USC)の映画学部に進学すると、同級生ボブ・ゲイルと出会い、二人でハリウッド志向の脚本執筆に励むようになります。学生時代に制作した短編映画が評価され、スティーヴン・スピルバーグの目に留まったことで、彼の師となってキャリア初期を支えることになりました。
初期の挫折から転機となった『ロマンシング・ストーン』
1978年にスピルバーグ製作総指揮で長編デビュー作『抱きしめたい』を監督し、続く『ユーズド・カー』(1980年)を発表しますが、いずれも批評面では評価されたものの興行的には成功しませんでした。1980年代前半には企画が次々と頓挫し一時低迷期を迎えます。転機となったのが1984年のマイケル・ダグラス主演『ロマンシング・ストーン』でした。当初は期待薄と見られた同作が予想外のヒットとなり、ゼメキスのキャリアに大きな変化をもたらしました。この成功で得た制作資金と信用をもとに、自身が温めていたタイムトラベル映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)の実現への道筋が開かれました。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの大成功
1985年に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、高校生マーティと科学者ドクのコンビが時間旅行するSFコメディとして空前のヒットとなりました。80年代を代表する娯楽作であり、その成功を受けて1989年と1990年には二つの続編が製作される人気シリーズへと発展します。タイムマシンとして登場するデロリアン車などアイコニックな要素も多く、現在でも世界中でカルト的な人気を誇ります。当時最先端の特殊効果を駆使しつつも緻密でユーモアあふれるストーリー展開により老若男女に親しまれ、ゼメキスの名を一躍トップ監督の仲間入りさせたシリーズとなりました。
アカデミー賞受賞作『フォレスト・ガンプ』での頂点
1994年にはトム・ハンクス主演のヒューマンドラマ『フォレスト・ガンプ/一期一会』が自身最大のヒットとなりました。知的ハンデを持つ主人公が20世紀アメリカの歴史的事件に次々と立ち会う物語は、全世界で約6億7700万ドルの興行収入を記録し、その年の全米興行収入第1位となります。最新のCG合成技術によって主人公フォレストが実在のニュース映像の中でケネディ大統領やジョン・レノンら歴史上の著名人と共演する演出が話題となりました。第67回アカデミー賞で作品賞・監督賞を含む6部門を受賞し、ゼメキスは映画監督として不動の地位を確立しました。この作品によって主演のハンクスとは以後も頻繁にタッグを組む関係となり、30年にわたる緊密なパートナーシップが始まりました。