CG技術の黎明期と映画業界での初導入: 映像革命の始まり
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CGの黎明期とエンターテイメントへの導入
コンピュータグラフィックス(CG)は、現代の映像表現において欠かせない技術ですが、その始まりは1960年代に遡ります。初期のCGは、主に軍事シミュレーションや科学的な可視化に使用されていましたが、やがてエンターテイメント業界に導入され、視覚的な革命をもたらしました。この記事では、CGの黎明期とエンターテイメントへの導入について深掘りします。
初期のコンピュータグラフィックス
CGの初期は、1960年代から1970年代にかけて、大学や研究機関での試験的なプロジェクトが中心でした。当時のコンピュータは計算能力が限られており、描かれる映像も単純な図形や線に留まっていました。しかし、これらの技術は、やがてエンターテイメント業界に応用されることになります。1970年代後半には、CGを使ったシンプルなアニメーションが短編映画として公開され、視覚的な可能性を示しました。
映画『トロン』: エンターテイメントにおけるCGの始まり
CGがエンターテイメント業界で注目されるようになった大きなきっかけは、1982年に公開された映画『トロン』です。『トロン』は、初めて本格的にCGを使用した長編映画として知られています。この映画では、コンピュータの中の世界を描くために、当時としては画期的なCG技術が用いられました。映画自体の興行成績はそれほど大きくありませんでしたが、視覚表現の新しい可能性として、業界全体に強いインパクトを与えました。
ILMと視覚効果の進化
1980年代には、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)をはじめとする視覚効果スタジオが、CG技術の開発に力を入れ始めました。ILMは、1985年の映画『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』で初めて完全CGによるキャラクター「ステンドグラスの騎士」を登場させ、リアリティを追求した映像表現を実現しました。この成功により、CGはハリウッド映画において重要な技術として認識されるようになりました。
『ジュラシック・パーク』: CGのブレイクスルー
1993年に公開された映画『ジュラシック・パーク』は、CGが世の中に浸透する大きな転機となりました。この映画では、CGを使って恐竜をリアルに再現し、観客に大きな驚きを与えました。ILMが手がけたこのCGは、アニマトロニクス(ロボット)と組み合わせることで、圧倒的なリアリティを実現しました。この映画の成功により、CGはハリウッド映画において不可欠な要素となり、視覚効果のスタンダードが確立されました。
まとめ
CGの黎明期から1990年代初頭までの間に、コンピュータグラフィックスはエンターテイメント業界に確固たる地位を築きました。『トロン』や『ジュラシック・パーク』といったエポックメイキングな作品が、CG技術の可能性を広く認識させ、映画やテレビにおいてCGが広く普及するきっかけとなりました。次回の後編では、CG技術が他の分野にもたらした影響と、現代における進化について探ります。