みなさんこんにちは。NEXT ACADEMY Podcastへようこそ。今回のテーマは、日本を襲うサイバー攻撃です。
2026年10月7日の報道で、国際的なハッカー集団が「日本のセキュリティは世界最悪だ」と指摘していました。同じ時期には、クラウドサービスへのランサムウェア攻撃で500近い企業や自治体に影響が出たほか、今年の情報漏えい被害が10月上旬の時点ですでに500件を超え、過去2年に並ぶ規模になっていると報じられました。
なぜ日本がこれほど狙われるのか。マサさんは、AI導入の遅れと、セキュリティに対する私たちのマインドそのものに問題があるのでは、と見ています。
「世界最悪」は誰の言葉か
HAL: まず、今回の「日本のセキュリティは世界最悪」という報道を、マサさんはどう受け止めましたか。
マサ: 先日の報道で、日本のセキュリティは最悪だとありました。これは、世界でも突出して弱いということなのか。まずそこが気になりました。
HAL: ここは分けて整理しておきます。この言葉は中立な国際ランキングの結果ではなく、攻撃している側のハッカー集団「Qilin」が取材で語ったものです。Qilinは、アサヒグループホールディングスへの攻撃で日本でも知られるようになったランサムウェア集団です。一方、アクセンチュアが17か国の大企業を対象に行った2025年の調査では、サイバー防御が脆弱とされる企業は世界全体で63%、日本は60%でした。企業の守りは世界的に弱く、この数字からは日本だけが突出して悪いとは言えません。「突出して弱い」というより「狙いやすいと見られている」と捉える方が、実態に近そうです。
攻撃はAIで加速し、守りは追いついていない
HAL: では、狙われる背景としてマサさんが最初に考えたのは何でしょうか。
マサ: 一番最初に思ったのは、攻撃側は最新のAIを駆使して攻撃してくる、ということです。そうであれば、守る側も当然、最新のAIを駆使して守らなければいけない。そう考えています。
HAL: 攻撃側がAIを使って弱点を探している可能性は、今回の一連の報道でも触れられています。攻める側はAIで速くなっている。それに対して守る側はどうか、という話ですね。
現場で感じる、経営層とAIの距離
HAL: 守る側である企業のAI活用について、マサさんはどう見ていますか。
マサ: だいたいどこの企業も、特に大手ほどAIの導入は遅れています。とりわけ役員クラスの人たちは、ほとんどAIを触っていない人の方が圧倒的に多い。だから、進化のスピードに追いつけていないのではないか、とまず思いました。
HAL: それは調査データというより、マサさんご自身の実感ということですね。
マサ: そうです。これは私が実体験で受けている印象です。仕事をしながらいろいろな人と対話を重ねる中で、遅れていることを実感しています。
HAL: 攻撃はAIで加速しているのに、意思決定をする立場の人がAIに触れていない。その差が、そのまま守りの遅れにつながっているという見立てですね。
変化は外からやって来る
HAL: この状況は、何をきっかけに変わるとお考えですか。
マサ: おそらく外圧だと思います。黒船来航があった通り、日本は外側から大きな圧力がかからないと、なかなか動こうとしないところがあります。国内だけで解決したという歴史は、まずないと私は見ています。東日本大震災が起きてTwitterが一般化したように、コロナ禍の中でYouTubeが一般化したように、今回、全員がセキュリティに本当に危機を感じる機会になれば、本格導入に移るのではと思っています。
HAL: その転換点は、もう来ていると感じますか。それとも、まだこれからでしょうか。
マサ: これからです。これから動いて、おそらく急いでやるのだろうと思っています。
推進役が抱えるジレンマ
HAL: 急ピッチで進むとすれば、懸念はありませんか。
マサ: 懸念もあります。これを担うのは、おそらくシステム開発やエージェントを担当する部署、人材だと思います。ただ、この人たちはAIを使っていなければいけない。そしてAIを使えば使うほど、自分たちの役割も減っていくことに気づくはずです。これが普及の歯止めになるのか、広がるのか。そこは微妙なところで、様子を見たいと思っています。
HAL: 推進する人と、立場を脅かされる人が同じである。構造的なジレンマですね。
残るのは、分野を越えてAIを使いこなす人
HAL: 最後に、その先に残るのはどんな人だとお考えですか。
マサ: 映像制作も、もう専門性がないんです。エージェントを使えば動くので。そういう意味では、総括的にAIをフル活用できている人が残るのだろうと思います。そしてその人は、元々いた分野とは全然関係のないところから出てくるのだろうと思っています。
HAL: セキュリティの話が、最終的には「これからの時代を誰が担うのか」という問いにつながりました。
「世界最悪」という言葉は攻撃者側のもので、日本だけが突出して弱いとは言い切れません。それでも、AIで攻めてくる相手に対して、守る側のAI活用が追いついていないという非対称は残ります。変化は外からの圧力で一気に進むかもしれません。そのときに残るのは、分野を問わずAIを使いこなせる人だ、というのが今回のマサさんの見立てでした。
それでは、また次回お会いしましょう。
参考資料
- ITmedia NEWS「IDCFクラウドへのランサム攻撃、495の企業・自治体に影響」(2026年10月)
- 読売新聞(Yahoo!ニュース)「攻撃で情報漏洩被害 今年500件超」(2026年10月)
- ITmedia NEWS「アサヒを襲ったランサムウェア集団"麒麟"(Qilin)とは?」(2025年10月)
- CodeZine「アクセンチュア「サイバーセキュリティ・レジリエンスの現状 2025」」(2025年7月)



